手足口病は、エンテロウイルスなどへの感染によって起こる感染症です。主に乳幼児に多く見られ、夏を中心に流行しやすい病気です。
手のひらや足の裏、口の中などに小さな水ぶくれや発疹が現れます。口の中の発疹が痛むと、食事や水分をとりにくくなることがあります。
多くの場合は3〜7日ほどで自然に改善しますが、水分がとれない場合は脱水に注意が必要です。また、ごくまれに髄膜炎や脳炎などの重い合併症を起こすことがあります。
手足口病では、
次のような症状が見られます
- 手のひらに小さな水ぶくれや発疹が出る
- 足の裏や足の甲に水ぶくれや発疹が出る
- 口の中やのどに水ぶくれや潰瘍ができる
- おしりや手足に発疹が出ることがある
- 口の中を痛がる
- 食事や水分をとりにくくなる
- 38℃前後の発熱が出る
- 発熱しないこともある
- 食欲が落ちる
- 不機嫌になる
- よだれが増えることがある
すべての症状がそろうとは限りません
発疹が少ない場合や、口の中の症状だけが目立つ場合もあります。
手足口病の発疹
手足口病では、口の中、手のひら、足の裏、足の甲などに、小さな赤い発疹や水ぶくれが現れます。おしりやひざ、ひじなどに発疹が広がることもあります。
発疹の現れ方には個人差があり、水ぶくれが目立つ場合もあれば、赤い点のように見える場合もあります。
発疹があるからといって、必ずしも手足口病とは限りません
水痘やほかのウイルス感染症、皮膚の病気などでも似た発疹が見られることがあるため、発疹の出方が気になる場合はご相談ください。
口の中の症状に注意しましょう
口の中やのどにできた水ぶくれが破れると、潰瘍になって痛むことがあります。 まだ言葉で痛みを伝えられないお子さまでは、次のような様子が見られることがあります。
- 食事を嫌がる
- 水分を飲みたがらない
- 飲み物を口に入れると泣く
- 母乳やミルクを飲む量が減る
- よだれが増える
- 口元を気にする
- 不機嫌になる
大切なのは、食事より水分とおしっこ(尿)です
食事がとれなくても、水分を少量ずつ飲めていて、おしっこ(尿)が出ていることが大切です。水分をほとんど飲めない場合や、おしっこ(尿)の回数が減っている場合は、早めに医療機関へご相談ください。
原因と感染経路
手足口病は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどへの感染によって起こります。主な感染経路は、次の3つです。
- 咳やくしゃみによる飛沫感染
- ウイルスが付着した手指や物を介する接触感染
- 便に含まれるウイルスが口に入る糞口感染
家庭内や保育園、幼稚園などの集団生活で広がることがあります。
症状が治まったあとも、便の中には比較的長い期間ウイルスが排出されることがあります。発疹が消えたあとも、排便後やおむつ交換後の手洗いを続けることが大切です。
お子さまの様子に合わせて、
受診のタイミングを確認しましょう
自宅で様子を見てもよい目安
次の項目がすべて当てはまり、時間とともに状態が悪化していない場合は、 ご家庭でこまめに観察しながら、診療時間内の受診で間に合うことがあります。
- 元気があり、呼びかけにいつもどおり反応する
- 少量ずつでも水分を飲めている
- 母乳やミルクをある程度飲めている
- おしっこ(尿)が普段どおり、またはある程度出ている
- 顔色や唇の色が悪くない
- 呼吸が苦しそうではない
- 繰り返し吐いていない
- 強い頭痛がない
- けいれんを起こしていない
- 症状が急激に悪化していない
様子を見ている間も、水分、おしっこ(尿)、元気さ、発熱、嘔吐などに変化がないかを繰り返し確認してください。発疹だけでなく、お子さまの全体の状態を見ることが大切です。
診療時間内の受診をおすすめする目安
次のような場合は、診療時間内に小児科へご相談ください。
- 手足や口の中に発疹が出ている
- 発疹が手足口病によるものかわからない
- 口の痛みが強い
- 食事や水分をとる量が減っている
- 母乳やミルクを飲む量が減っている
- おしっこ(尿)の回数や量が少なくなっている
- 発熱が続いている
- 高熱が出ている
- 不機嫌な状態が続いている
- いつもより元気がない
- 発疹の広がり方や状態が気になる
- 園や家庭内で手足口病が流行している
- 保護者の方から見て「いつもと違う」と感じる
手足口病と思われる場合でも、発疹の状態や口の中の痛み、脱水の有無などを確認することが大切です。 安心してご自宅で過ごしていただくためにも、気になる症状がある場合は一度ご相談ください。
夜間・休日でも早めに受診するサイン
次のような状態がある場合は、夜間や休日でも早めに医療機関へ相談・受診してください。
- 水分をほとんど飲めない
- 母乳やミルクをほとんど受け付けない
- おしっこ(尿)の回数や量が明らかに減っている
- 半日近くおしっこ(尿)が出ていない
- 高熱が続いている
- ぐったりして元気がない
- 呼びかけへの反応が弱い
- ずっとうとうとしていて起こしにくい
- 激しい頭痛がある
- 嘔吐を繰り返している
- けいれんを起こした
- 意識や言動がいつもと違う
- 呼吸が速い、または明らかに苦しそう
- 顔色や唇の色が悪い
- 症状が急激に悪化している
ごくまれですが、手足口病に伴って髄膜炎や脳炎などの重い合併症を起こすことがあります。「ただの手足口病だろう」と決めつけず、強い頭痛、繰り返す嘔吐、けいれん、意識や反応の変化がある場合は、早めに受診してください。
迷わず119番へ連絡する目安
- 呼びかけても反応しない
- 意識がもうろうとしている
- 呼吸をしていない、または呼吸が弱い
- 唇や顔が青紫色になっている
- 呼吸が明らかに苦しく、ぐったりしている
- けいれんが5分以上続いている
- けいれんが止まっても意識が戻らない
- けいれんを何度も繰り返している
口の痛みで水分をとれないと、
脱水になることがあります
特に乳幼児は短時間で脱水が進むことがあるため、次のような変化に注意してください。
- おしっこ(尿)の回数や量が明らかに少ない
- 半日近くおしっこ(尿)が出ていない
- 口の中や唇が乾いている
- 泣いても涙が出にくい
- 目が落ちくぼんで見える
- 手足が冷たい
- 顔色が悪い
- 元気がなく、ぐったりしている
- 呼びかけへの反応が弱い
- 水分をほとんど受け付けない
長く様子を見ないでください
このような状態が見られる場合は、ご家庭だけで長く様子を見ず、早めに医療機関へご相談ください。
手足口病の治療
手足口病の原因となるウイルスに対する特別な治療薬はありません。多くの場合は、症状を和らげながら自然な回復を待つ対症療法が中心です。
発熱や口の痛みが強い場合は、必要に応じて解熱鎮痛薬を使用することがあります。
解熱鎮痛薬を使用する場合は、医師から処方された薬を、指示された用法・用量で使用してください。以前処方された薬や、兄弟・大人用の薬を自己判断で使用しないでください。
手足口病のときに
ご家庭でできるケア
水分を少量ずつ、こまめに
口の中が痛いと、一度にたくさん飲むことが難しくなります。水や麦茶、母乳、ミルク、経口補水液など、お子さまが飲めるものを少量ずつ、こまめに与えてください。
コップから飲みにくい場合は、スプーンやストローなどを使う方法もあります。飲めた量だけでなく、おしっこ(尿)が出ているかも確認しましょう。
経口補水液(ORS)の飲ませ方冷たく、刺激の少ないものを選ぶ
口の中が痛いときは、冷たく、やわらかく、のどごしのよいものが食べやすいことがあります。冷たい麦茶、ゼリー、プリン、冷ましたおかゆ、豆腐、やわらかいうどんなどです。
酸味、塩味、香辛料が強いものや、熱いもの、硬いものは、口の中にしみて痛みが強くなることがあります。食欲がないときは無理に食べさせず、水分がとれているかを優先してください。
発熱や痛みが強いときは無理をさせない
発熱や口の痛みがある間は、無理に外出したり、普段どおりに遊ばせたりせず、十分に休ませてください。
元気や食欲が戻ってきたら、お子さまの様子を見ながら少しずつ通常の生活へ戻しましょう。
発疹や水ぶくれを強くこすらない
発疹や水ぶくれは、強くこすったり、無理につぶしたりしないでください。
清潔に保ち、かゆみや痛みが強い場合、じゅくじゅくしている場合はご相談ください。
家庭内での感染を防ぐために
手足口病は、咳やくしゃみ、手指、便などを介して広がることがあります。帰宅後や食事前に石けんと流水で手を洗い、排便後やおむつ交換後は特に丁寧に手を洗ってください。鼻水やよだれを拭いたあとも手を洗いましょう。
タオルやコップ、食器の共用を避け、おむつや便を適切に処理し、おもちゃやドアノブなど、よく触れる場所を清潔にしてください。治ったあとも、排便後やおむつ交換後の手洗いを続けてください。
受診までに確認しておくとよいこと
診察時に次の内容をお伝えいただくと、お子さまの状態を確認する参考になります。
発熱・発疹
- いつから発熱しているか
- 最も高かった体温
- いつから発疹が出たか
- 発疹が最初に出た場所
- 発疹がどのように広がったか
- 口の中に発疹や水ぶくれがあるか
水分・食事
- 水分や母乳、ミルクをどのくらいとれているか
- 食事をどのくらいとれているか
- 最後におしっこ(尿)が出た時間
そのほかの症状・薬
- 嘔吐や頭痛の有無
- けいれんの有無
- 使用した薬と使用した時間
- 家庭や園、学校で手足口病が流行しているか
診察では、発疹の場所や形、口の中の状態、発熱の経過を確認し、あわせて水分やおしっこ(尿)、脱水のサイン、元気や反応、頭痛や嘔吐、けいれんの有無などから、ご家庭で経過を見られる状態かを判断します。 発疹は受診時には薄くなっていることがあります。可能であれば、発疹がはっきりしているときに写真を撮っておくと、診察時の参考になります。
登園・登校の目安
手足口病には、一律の出席停止期間は定められていません。 次の状態がそろっていることが、登園・登校を再開する目安です。
- 熱が下がっている
- 元気が戻っている
- 口の中の痛みが落ち着いている
- 普段どおりに水分や食事をとれている
- 全身状態が安定している
発疹が残っているだけなら、控える必要はありません
手足口病は、症状が治まったあとも便から長期間ウイルスが排出されることがあるため、発疹が完全に消えるまで隔離することは現実的ではありません。登園・登校後も、排便後の手洗いを丁寧に行ってください。 園や学校によって独自の規則や必要書類がある場合は、その規定もご確認ください。
よくある質問
手足口病についてよくいただくご質問をまとめました。
発疹が全部消えるまで休ませた方がよいですか?
手足口病では、症状が治まったあとも便から長期間ウイルスが排出されることがあります。そのため、発疹が完全に消えるまで一律に休ませても、感染を完全に防ぐことは困難です。発熱がなく、普段どおりに食事ができ、全身状態がよくなっていることを登園・登校の目安にします。
熱がなくても手足口病のことはありますか?
はい。手足口病では38℃前後の発熱が見られることがありますが、熱が出ない場合もあります。熱がなくても、手のひら、足の裏、口の中などに特徴的な発疹や水ぶくれが見られることがあります。
夜間に受診するか迷ったときは、どうすればよいですか?
夜間や休日に受診すべきか迷う場合は、子ども医療電話相談「#8000」で相談できます。ただし、呼びかけても反応しない、呼吸がおかしい、唇や顔が青紫色になっている、けいれんが5分以上続いている場合は、「#8000」を待たずに119番へ連絡してください。
手足口病かもしれないと思ったら
ご相談ください
手足口病の多くは、数日から1週間ほどで自然に回復します。
一方で、口の中の痛みによって水分をとれず、脱水になることがあります。
また、ごくまれに髄膜炎や脳炎などの重い合併症を伴うことがあるため、発疹だけでなく、
元気さ、水分、おしっこ(尿)、頭痛、嘔吐、けいれん、意識や反応など、
お子さまの全体の状態を確認することが大切です。