お子さまが吐いたり、下痢をしたりしているとき、最も大切なのは「脱水」を防ぐことです。経口補水液は、水分と塩分を効率よく補うために成分が調整された飲み物です。
軽度から中等度の脱水では、経口補水液を少量ずつ飲ませる「経口補水療法」によって、点滴をせずに水分と塩分を補えることがあります。
ただし、経口補水液は嘔吐や下痢そのものを治す薬ではありません。水分をまったく受け付けない、飲ませても繰り返し吐く、おしっこ(尿)が出ない、ぐったりしている場合は、ご家庭だけで続けず、早めに医療機関へご相談ください。
まず覚えてほしいのは
「少量ずつ、何度も」
一気にたくさん飲ませると、刺激で再び吐いてしまいます。 上から順に進めてください。
吐いた直後は、1〜2時間ほど胃を休める
吐いた直後に飲ませると、再び吐いてしまうことがあります。1〜2時間ほど胃を休ませ、吐き気が落ち着いてから始めてください。
最初は約5mLを、5分おきに
ティースプーン1杯、またはペットボトルのキャップ1杯(約5mL)を、5分おきに飲ませます。
コップから飲みにくい場合は、スプーン、スポイト、針のついていないシリンジなどを使っても構いません。
吐かずに飲めたら、間隔を短くする
問題なく飲めているようであれば、5分おきの間隔を、3分、2分、1分と少しずつ短くしていきます。
間隔を短くする代わりに、1回に飲ませる量を10mL、15mL、20mLと段階的に増やす方法もあります。急にコップや哺乳瓶でたくさん飲ませないでください。
再び吐いたら、15分休ませて5mLから
途中で吐いてしまった場合は、15分ほど様子を見てから、再び5mL程度の少量から根気強く再開してください。
一度吐いたからといって、すぐに経口補水を諦める必要はありません。ただし、少量でも毎回吐いてしまう場合や、水分をまったく受け付けない場合は、無理に続けず医療機関へご相談ください。
経口補水液とは、
どのような飲み物ですか
脱水時に失われた水分とナトリウム、カリウムなどの電解質を、 体内へ吸収しやすいバランスで配合した飲み物です。
使うのは、脱水が心配なとき
主に次のような状態による、軽度から中等度の脱水に使用します。
- 嘔吐している
- 下痢が続いている
- 発熱して汗をかいている
- 食事や水分をとる量が減っている
- おしっこ(尿)の回数や量が減っている
- 口の中や唇が乾いている
- 普段より元気がなく、脱水が心配される
普段の水分補給として日常的に飲ませるものではありません。お子さまが元気で脱水がない場合は、水やお茶、母乳、ミルクなど、普段の飲み物で構いません。
製品の選び方
市販品を選ぶときは、パッケージに「経口補水液」または「ORS」と表示されているものを確認してください。あわせて、感染性胃腸炎による下痢や嘔吐に伴う脱水への使用が記載されているか、製品の表示を確認しましょう。
製品によって対象となる状態や摂取量が異なるため、パッケージに記載された使用方法や、医師・薬剤師などの指示に従ってください。
スポーツドリンクとの違い
経口補水液は、嘔吐や下痢による脱水時に、水分と電解質を吸収しやすいように調整されています。一方、一般的なスポーツドリンクやジュースは、経口補水液より塩分が少なく、糖分が多いものがあります。
糖分の多い飲み物を一度にたくさん与えると、下痢を悪化させることがあります。嘔吐や下痢に伴う脱水が心配なときは、経口補水液を優先してください。
飲ませる量の目安
飲ませる量は、お子さまの体重や脱水の程度によって異なります。 ご家庭では、まず5mLを5分おきに飲ませ、吐かずに続けられるかを確認することが大切です。
飲めるようになったあとの1回量
問題なく飲めるようになったら、1回に飲ませる量を、体重1kgあたり1〜2mL程度まで少しずつ増やします。例えば体重10kgのお子さまであれば、1回10〜20mL程度が目安です。
ただし、最初からこの量を飲ませるのではなく、必ず5mL程度から始めてください。
最初の3〜4時間の目安
軽い脱水では、最初の3〜4時間で、体重1kgあたり合計約50mLが一つの目安です。
- 体重5kg:約250mL
- 体重10kg:約500mL
- 体重15kg:約750mL
- 体重20kg:約1,000mL
これは目標量の一例であり、無理にすべて飲ませるためのノルマではありません。脱水の程度をご家庭だけで正確に判断することは難しいため、飲ませる量について医師から指示を受けている場合は、その指示を優先してください。
水分をとれない、必要量を大きく下回る、おしっこ(尿)が減っている場合はご相談ください。
経口補水がうまく進んでいるサイン
次のような変化が見られる場合は、少しずつ水分を補えていると考えられます。
- 経口補水液を吐かずに飲めている
- おしっこ(尿)が出るようになった
- 口の中や唇の乾燥が改善してきた
- 涙が出るようになった
- 顔色がよくなってきた
- 機嫌や元気が少し戻ってきた
- 呼びかけへの反応が普段に近づいてきた
一時的によくなったように見えても、嘔吐や下痢が続いている間は、水分、おしっこ(尿)、元気さをこまめに確認してください。
嫌がる・飲みにくいときの工夫
上体を45度ほど起こして飲ませる
横になったままではなく、抱っこをするなどして、上体を45度くらい起こした姿勢で支えながら飲ませます。
むせたり、飲みにくそうにしたりしていないかを確認しながら与えてください。
スプーンやシリンジで少量ずつ
コップや哺乳瓶で飲ませると、一度にたくさん飲んでしまうことがあります。スプーン、スポイト、針のついていないシリンジなどを使うと、5mL程度の少量を調整しながら飲ませやすくなります。
口の奥へ勢いよく流し込まず、頬の内側へ少しずつ入れてください。お気に入りのスプーンや小さなコップを使う、「5分たったら一口飲もう」と声をかけるなど、続けやすい工夫も有効です。無理に口を開けさせたり、押さえつけて飲ませたりしないようにしましょう。
冷やす・凍らせて与える
常温では飲みにくそうな場合は、製品の表示を確認したうえで、冷蔵庫で冷やしてみても構いません。
製氷皿で凍らせ、アイス感覚で少しずつなめさせる方法もあります。お子さまが飲みやすい温度で、少量ずつ試してください。
ゼリータイプを試す
液体の味や塩気を嫌がる場合は、経口補水液のゼリータイプを、スプーンで少量ずつ与える方法があります。
ただし、飲み込むことが難しいお子さまや、むせやすいお子さまは、使用前に医師へご相談ください。
経口補水液を飲ませるときの注意点
一度にたくさん飲ませない
のどが渇いていると、一気に飲みたがることがあります。
一度に大量に飲むと再び吐くことがあるため、吐き気が落ち着くまでは少量ずつ続けてください。
水やジュースで薄めない
経口補水液は、水分と電解質を吸収しやすい濃度に調整されています。水やジュースを混ぜたり、自己判断で薄めたりすると、成分のバランスが変わります。
液体タイプはそのまま飲ませてください。粉末タイプは、製品に記載された正確な水の量で溶かしてください。
薬を混ぜない
経口補水液へ薬を混ぜると、味が変わって飲めなくなったり、必要な量の薬を飲めなかったりすることがあります。
薬の飲ませ方は、医師または薬剤師へご確認ください。
普段の飲み物として常用しない
経口補水液は、脱水時の水分・電解質補給を目的とした飲み物です。脱水がないときに、普段の水やお茶の代わりとして日常的に飲ませる必要はありません。
持病や食事制限がある場合は相談する
心臓や腎臓の病気があるお子さま、塩分・ナトリウム・カリウムなどの摂取制限を受けているお子さまは、使用前に主治医へご相談ください。
開栓後の保存
開栓後は、容器へ直接口をつけず、飲ませる分だけ別のコップなどへ取り分けると衛生的です。残った経口補水液はキャップを閉めて冷蔵庫で保存し、製品に記載された保存方法と期限に従って、早めに使い切ってください。
一度口をつけたものや、長時間室温に置いたものは、使用を避けましょう。粉末タイプを溶かした場合も、製品ごとの保存方法を確認してください。
母乳・ミルク・食事について
母乳は基本的に続けられます
母乳を飲んでいる赤ちゃんは、基本的に授乳を続けて構いません。一度に長時間飲ませると吐く場合は、授乳時間を短くし、回数を分けてください。
授乳の合間に、必要に応じて経口補水液を少量ずつ与えます。
ミルクは吐き気が落ち着いてから再開する
嘔吐が続いている間は、経口補水液を少量ずつ与えます。吐かずに飲めるようになり、顔色や機嫌が戻ってきたら、ミルクを少量から再開してください。
医師から指示がない限り、ミルクを自己判断で薄める必要はありません。
食事は無理に食べさせない
食欲がないときは、無理に食べさせる必要はありません。まずは水分がとれているか、おしっこ(尿)が出ているかを優先して確認してください。
吐かずに水分をとれるようになり、食欲が戻ってきたら、食べやすいものを少量ずつ再開しましょう。
脱水のサインを確認しましょう
特に赤ちゃんや小さなお子さまは、短時間で脱水が進むことがあるため、 次のような変化に注意してください。
- おしっこ(尿)の回数や量が明らかに減っている
- 長時間おしっこ(尿)が出ていない
- 口の中や舌、唇が乾いている
- 泣いても涙が出にくい
- 目が落ちくぼんで見える
- 手足が冷たい
- 顔色が悪い
- 元気がなく、ぐったりしている
- 呼びかけへの反応が弱い
- 水分をほとんど受け付けない
経口補水液だけで長く様子を見ないでください
このような状態がある場合は、経口補水液だけで長く様子を見ず、医療機関へご相談ください。
お子さまの様子に合わせて、
受診のタイミングを確認しましょう
診療時間内の受診をおすすめする目安
次のような場合は、診療時間内に小児科へご相談ください。
- 嘔吐を繰り返している
- 嘔吐が24時間近く続いている
- 下痢の回数が多い
- 経口補水液を飲む量が少ない
- 飲ませると吐くことを繰り返している
- おしっこ(尿)の回数や量が減っている
- 食欲が戻らない
- 発熱が続いている
- いつもより元気がない
- 生後3か月未満で嘔吐や下痢がある
- 持病があり、脱水が心配される
- 保護者の方から見て「いつもと違う」と感じる
経口補水液を少し飲めていても、時間とともに元気がなくなる、おしっこ(尿)が減るなどの変化がある場合は、早めにご相談ください。
夜間・休日でも早めに受診するサイン
次のような状態がある場合は、夜間や休日でも早めに医療機関へ相談・受診してください。
- 水分をまったく受け付けない
- 5mL程度の少量でも毎回吐いてしまう
- 半日近くおしっこ(尿)が出ていない
- ぐったりして、ほとんど遊ばない
- 呼びかけへの反応が弱い
- ずっとうとうとしていて起こしにくい
- 顔色が明らかに悪い
- 手足が冷たい
- 強い腹痛がある
- 痛がる時間と落ち着く時間を繰り返す
- 黄色や緑色のものを吐いた
- 吐いたものに血液が混じっている
- 血便や黒い便が出た
- お腹が大きく張っている
- 症状が急激に悪化している
周期的な強い腹痛、緑色の嘔吐、イチゴジャムのような血便がある場合は、腸重積症など早急な治療が必要な病気が隠れていることがあります。経口補水を続けながら長く様子を見ず、速やかに医療機関へご相談ください。
迷わず119番へ連絡する目安
- 呼びかけても反応しない
- 意識がもうろうとしている
- 呼吸をしていない、または呼吸が弱い
- 唇や顔が青紫色になっている
- 呼吸が明らかに苦しく、ぐったりしている
- けいれんが5分以上続いている
- 激しい腹痛で動けない
緊急性が高いと感じた場合は、経口補水液を無理に飲ませず、救急車を要請してください。
受診までに確認しておくとよいこと
医療機関へ相談・受診するときは、次の内容を確認しておくと、 お子さまの状態を判断する参考になります。
嘔吐・下痢の経過
- いつから吐いているか、下痢をしているか
- 嘔吐と下痢の回数
- 最後に吐いた時間
- 吐いたものの色
- 便の色や状態
- 血液が混じっていないか
経口補水の状況
- どのくらいの量を飲ませたか
- 飲ませると吐くか
- 最後におしっこ(尿)が出た時間
全身の様子・薬
- 発熱の有無と最も高かった体温
- 元気や呼びかけへの反応
- 腹痛の有無
- 使用した薬と使用した時間
吐いたものや便の色・状態が気になる場合は、可能であれば写真を撮っておくと、診察時の参考になります。
よくある質問
経口補水液についてよくいただくご質問をまとめました。
吐いたあと、どのくらい待ってから飲ませればよいですか?
吐いた直後に飲ませると、再び吐いてしまうことがあります。1〜2時間ほど胃を休ませ、吐き気が落ち着いてから、約5mLずつ5分おきに飲ませてください。途中で吐いた場合は、15分ほど様子を見てから、もう一度5mL程度から再開します。
スポーツドリンクで代用できますか?
一般的なスポーツドリンクは、経口補水液とは水分・塩分・糖分のバランスが異なります。糖分が多いものは、下痢を悪化させることがあります。嘔吐や下痢に伴う脱水が心配な場合は、パッケージに「経口補水液」または「ORS」と表示された製品を優先してください。
夜間に受診するか迷ったときは、どうすればよいですか?
夜間や休日に受診すべきか迷う場合は、子ども医療電話相談「#8000」で相談できます。ただし、呼びかけても反応しない、呼吸がおかしい、唇や顔が青紫色になっている、激しい腹痛で動けない場合は、「#8000」を待たずに119番へ連絡してください。
少量ずつでも飲めているかを
確認しましょう
嘔吐や下痢があるときは、食事の量よりも、水分がとれているか、
おしっこ(尿)が出ているかを見ることが大切です。
経口補水液は、一度にたくさん飲ませるのではなく、5mL程度から少量ずつ、繰り返し飲ませてください。